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日本各地に今も残る懐かしい婚礼
 嫁入り菓子 おいり(香川・西讃)

2015/10/02

嫁入り菓子おいり

この地の婚礼に400年以上伝わる、特別なお菓子

瀬戸内海に面した四国の香川県は古く讃岐国と呼ばれた。いまではひとつの県だが、江戸時代、高松市を含む東讃は高松藩、西側の西讃は丸亀藩と二分されていた。江戸文化の影響が色濃い東讃と、京文化の影響が強い西讃。そんな西讃に400 年にも渡って伝えられる嫁入り菓子がある。ほのかな黄・緑・紫・赤・桃色の5色の愛らしい「おいり」。花嫁は今も変わらず、おいりを手土産にお嫁入りする。

日本各地の生活雑貨を中心とする工芸品を全国に向けて広く販売する活動をしている奈良の『中川政七商店』では、香川県のおいり商品もプロデュース。おいりの愛らしさを他府県のお祝い時の贈り物にと、桐箱入りの商品にした。白のあわじ結びの水引もかわいい。

地に大きく朱色で「寿」と印字された両手のひらに載るほどの紙の袋。捻られた口を開くと、中からは心もとないほど軽い五色の丸いあられがこぼれ落ちる。食べてしまうのがもったいなほどやさしい色味の粒をひとつ口に放り込むと、なんともいえないやさしい甘味が淡雪のように口の中で消えていく。 香川県の主に西側に伝わる「おいり」は日常的に食べられているお菓子ではないという。それは「花嫁さんがやってきた」ことを示す特別なお菓子。 嫁入り菓子「おいり」の由来は、今から400 年以上も前のこと。丸亀の初代藩主の姫君がお輿入れの折、領下の農民のひとりが五色の花餅を煎って作ったあられを献上したのが始まりと伝わる。 「あらたにその家の一員になり、心を丸くしてまめまめしく働きますのでよろしくお願いします。そうした意味が込められているとも伝えられます」 そう話すのは、丸亀市で曾祖父の代から100 年以上おいりを作り続ける『則包商店』の則包裕司さんだ。

2014年4月に、ご主人の地元である兵庫県姫路の白鷺宮護国神社で結婚式をあげたYさん。白鷺宮参集殿「安寧」での披露宴でお引き出物にしたのが、思い出深い「おいり」。

 丸亀市に隣接する坂出市で生まれ育った新婦Yさんは、おいりについてこんな話をしてくれた。 「仏壇参りという風習があるんです。お嫁入り当日の朝、花嫁さんは実家から婚家に行って仏壇に手を合せる。そのとき花嫁さんが手土産として持参するのが『おいり』なんですね。お嫁さんを見に来た近隣の方々に、『これからよろしくお願いいたします』とい
う思いを込めて、みなさんに配る。今は簡略化されて、このご挨拶は結婚式の前に行われるようになりましたが、それでもここらへんではやはり婚礼にはおいりは欠かせません」 坂出にはもうひとつ、おいりに関連した楽しい風習があった。近くで嫁入りがあると聞けば、子どもたちが覗きにいく。その子どもたちのために、砂遊び用の小さなプラスチックのカラーバケツを用意し、そのなかにシャベルやキューピー人形などのおもちゃと一緒に入れられるのがおいり。 「こうした風習は、ほかの地域ではないらしいんですけどね(笑)。うちにも子どもの頃においりを入れていただいた小さなバケツがいくつもありました」(新婦Yさん)

(右)新婦Yさんの父方のお祖父様・お祖母様の婚礼写真。「南海地震(昭和21年)のときに、ふたりして逃げたという話を聞きました。その年に結婚したようです」(新婦Yさん)。由理江さんは大のおばあちゃん子だった。子どもの頃、お祖母様と一緒にこの婚礼写真が貼ってある古びたアルバムのページを開きながら、いろんな話を聞いたのも大事な思い出だ。

(左)新婦Yさんのご両親とも坂出出身。結婚式をあげたのは昭和50年代初めのこと。お嫁入りにはもちろん、おいりを準備した。その数は今とは比べ物にならないほどたくさんだったという。

 祖母、母と三代続いて坂出出身という新婦Yさんは、結婚式をご主人の地元である瀬戸内海を挟んだ兵庫県姫路で行った。

『則包商店』のおいり商品の数々。新婦Yさんが引き出物にしたのは、『雅』と命名された和の柄の寿箱のものだったとか。袋入りのものは、昔から仏壇参りのときなどに配られたもの。乾燥させた餅を小さく裁断し、角が取れて丸くなるように煎るおいり。色付けには蜜も使われるので、袋や箱を開けるとほのかに甘い香りがする。口に入れるとサクッ、次の瞬間にやさしい甘さとともにスーッと口のなかで消えていく。なんともいえないシアワセな味だ。

 「引き出物にはおいりを選びました。私にとって子どもの頃から花嫁さんの手土産といえばおいり。姫路の方々にもぜひ、私の地元の嫁入り菓子を食べていただきたかったんです」(新婦Yさん)

初出:日本の結婚式No17 取材・文/平井かおる 取材協力/新婦Yさん・則包商店・中川政七商店