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日本各地に今も残る懐かしい婚礼
一生水と万寿まき(福井)

2017/10/09

一生水と万寿まき

日本全国に受け継がれてきた固有の婚礼文化があり、なかでも北陸は古くからのしきたりや習わしが比較的よく残っている地域。 福井県では、新婦が結婚式の当日、婚家に行ってお仏壇参りをするがその際に、「一生水」と「万寿まき」という、独特の儀式を行うという。それはどんなことで、なぜ行われているのか。福井市内に本店を構え、数多くの婚礼を手掛けてきた衣裳店でお話を伺った。

 

越前福井の結婚式について、「実は名古屋よりも派手婚文化かもしれませんよ」と、福井を代表する儀式衣裳専門店、ブライダルマスミのスーパーバイザー宮守洋輔さんは語る。普段の暮らしぶりは堅実で決して派手ではないけれど、だからこそ、婚礼の際には思い切ってお金をかけるという。

「以前は、あそこがトラック3台で嫁入り道具を運んだと聞けば『よし!それならウチは4台で』というように。より盛大にという一種のサービス精神と女の子への財産分けという意味合いもあったのでは」と、福井の婚礼を長年見続けて来た社長の宮守雅治さん。

昔のような、中が見えるガラス張りのトラックに着物をたくさん詰めた箪笥を何竿も積んで…といったお嫁入りはさすがに見かけなくなったとはいえ、今でもお色直し4着は珍しくなく、引き出物も昔ながらの縁起物は人気がある。そんなお振る舞いのひとつが、「万寿まき(マンジュマキ)」、マンジュは饅頭のことで縁起を担いで「万寿」とされている。

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上段左/晴れの日の大役を仰せつかったのは 新郎の姪っ子さん。 右/福井市内にある新郎の実家 で「一生水」の儀を行った関東出身の新婦。挙式後は東京で暮らすため、口にする水は違えど、そこに込められた新婦の覚悟は本来の意味を少しも失ってはいない。 下段左/かわらけの盃もしっかり割れて、滞りなく「一生水」の儀は終了。

福井の伝統的な婚礼は、まず新婦が婚家(新郎家)に向かうことから始まる。玄関で、一升枡の中にある水の入った盃を受け取り、水を飲み干す。「一生この家の水を飲みます」という誓いの意味があり、「一生水」または「一升水」と呼ばれる。一升枡を持って出迎えるのは婚家の子どもか若い女性。かわらけ(素焼きの器)の盃で飲み干し、その後は盃を玄関先で割る。それには「(実家に)後戻りできない」という意味があり、かわらけが必ず割れるまで行わなくてはならない(実際には、割れない心配はほぼないそう)。

玄関で一生水の儀式を済ませて婚家に入った花嫁は、打掛から白無垢へと着替え、仏壇にお参りをする。家族の一員となることを婚家のご先祖様に報告。この時、新郎は一緒にいないのが習わしで、なぜなら挙式の時に初めて、美しく着飾った花嫁を見るためである。

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左/婚家立ち寄りの後、福井市内の出雲大社福井分院で神前挙式。様々な儀式の緊張感からも解き放たれた新婦は、祝福に駆け付けた多くの参列者に、改めて婚家の一員となった晴れやかな笑顔を見せた。 右/「仏壇まいり」で婚家のご先祖様に家族の一員となる報告を済ませる。花嫁の支度が大変なため、慌ただしさを避け、前もって行う場合もあるが、やはり結婚式当日の朝に行うのが伝統的だ。

花嫁の婚家立ち寄りの際には近所の方をはじめ、多くの人が集まる。幸せ(万寿)のおすそわけでもある万寿まきは、集まってくれる人が多いことは幸せだと考えられている。最近では何か自分たちらしいおもてなしがしたいと考える若いカップルに万寿まきが見直されていると洋輔さんは語る。「儀式に込められた願いや意味を知るにつれて、やってよかったとなることがほとんど」だそう。

明治時代頃から始まったといわれる万寿まきや一生水が、少しずつ形を変えながらも守られてきたのは、この「やってよかった」の歴史の積み重ねだからではないだろうか。「こうした日本の伝統的な結婚式の心を伝えるのは、私たちの役目でもあります」と、宮守社長も語ってくれた。

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福居之庄総社 神明神社で「万寿まき」を行うカップル。とりわけ、可愛い孫からの幸せのおすそ分けは、何よりの贈り物となる。

 

最近は、式場でも万寿まき

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近年は、道路の使用許可を取るなどの手続きが必要になったこともあって、自宅での万寿まきは減少している。その代わり、結婚式場で行われることが増加。福居之庄総社 神明神社では、 万寿まきができるスペースを新設。親世代はもちろん、今の若い世代にも和婚(神前式や和装)をするなら伝統の万寿まきを、と希望する人が増えているという。

初出:日本の結婚式No.23 取材・文:加賀谷範子 取材・写真協力:ブライダルマスミ