特集

祈りの中の花嫁衣裳

本手描き友禅作家秋山章作品の魅力

祈りの中の花嫁衣裳

美術的価値の高いうちかけ

出荷は年5枚のみ

織が主流だったうちかけに、本手描き友禅の技巧を初めて取り入れた花嫁衣裳界の鬼才、秋山章。
そもそも、それまでうちかけで用いられることのなかった本手描き友禅を、なぜ独学してまで花嫁衣裳に取り入れようと思ったのか。その根底には、粗悪品が出回ることも少なくなかった時代、「神々に最も近い存在」の花嫁が、人生最高の舞台でどの方向から見ても最も美しく輝けるようにしたいという芸術家としての信念があった。そのために女性の体にやわらかにフィットする最上級の絹地を自らプロデュースし、その上に筆で目立つ箇所に文様を一つひとつ描いていく本手描き友禅の「染め」の技巧を施すことで、立体的な美を生み出すことに成功したのである。

秋山章

一枚につき25工程、発想を得てから3年以上もの時間をかけて制作されるうちかけは、現在、目利きの5店舗に、年5枚しか出荷されない希少価値の高い衣裳となっている。

本手描き友禅のうちかけには3つの「見せ場」がある。一番は背中。そして左袖下、左胸元だ。和装女性の着付けは左を上に重ねるため、職人が技巧を施す際は、左側の柄付けや細工により神経を尖らせる。一枚絵として美しく。羽織った時により美しく。これがあたかも美術工芸品と称えられる伝友会のうちかけの特徴だ。

伝友会のうちかけは、本手描き友禅以外にも、金箔や金粉をのせて接着する「金彩工芸」、白金を叩きのばして箔をつくり、それを張り付ける「プラチナ箔」、やわらかな絹地に貝殻から削り落とした螺鈿を張り込む「貝螺鈿」など、すべての工程において職人の熟練の技が刻まれている。花嫁はその作家と職人の想いや祈りとともに嫁ぐことになる。

ルールを壊し、自らルールをつくる。伝統とはイノベーターによって紡がれるものだ。

<プラチナ箔(はく)>

<貝螺鈿(かいらでん)>

美しいうちかけ

プラチナ箔 倖寿爛漫 [ぷらちなはく こうじゅらんまん]

「日本の結婚式30号」P136
「日本の結婚式30号」P136

意思が強く、自立心旺盛な現代の花嫁をイメージしてオートクチュールの要素を取り入れた。日本伝統柄である大振りの牡丹や菊に加えて、ヨーロッパ貴族の代表花、薔薇を本手描き友禅で大胆に柄付け。丁寧に紡がれた薄絹地にプラチナ箔をのおせ、花文様のうえに貝螺鈿を施すことで八方から眺めてもキラキラと輝く魅惑の花嫁に。クールなプラチナ箔とは対照的に、躍動感あるモダンな花嫁衣裳に仕上がっている。

貝螺鈿 正殿奉讃寿 [かいらでん せいでんほうさんじゅ]

「日本の結婚式30号」P137
「日本の結婚式30号」P137

菊、藤、紅葉、松、菖蒲、牡丹、木蓮、梅と日本古来から伝承されている祝いの花の数々が本手描き友禅で目いっぱい柄付けされている贅沢な作品。春夏秋冬の祝い花がすべて盛り込まれており、季節を問わずに着用できる。花嫁の背下を寄り添って飛翔する鶏は夫婦仲睦まじさの象徴。群れは子孫繁栄を意味する。背中には世界最古の花木といわれる大輪の白木蓮が描かれており、花言葉は「自然への愛」「崇高」「高潔な心」「持続性」

文章・写真「日本の結婚式30号」P132~P137より

衣裳ギャラリー

最高級の本手描き友禅のうちかけを保有する婚礼衣装専門店<全国5店舗>

長野県松本市

貴重なうちかけに袖を通してみたいプレ花嫁の皆さんは、上記取扱店に問合せを。

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