【和婚をつくる人々】
かつら師 重盛照文さん
身近な人の影響で美容の道へ
今や婚礼業界で「かつら」といえば品川に居を構える「かつらしげもり」。「軽い・かぶりやすい・つけ心地がいい」などの理由から多くの花嫁の支持を集めている。
かつて、日本髪のかつらといえば「重い・痛い・苦しい」のは当たり前。そんな理由からか和装の花嫁が徐々に姿を消し、ドレスが主流になっていた頃、かつらしげもりの重盛照文さんが「現状を打破したい!」という想いで、現在の「つけ心地の良いかつら」の開発に取り組んだ。20年勤めたかつらの会社を辞めた後、九州の著名な結髪師の下で2年近く修行を積み共に開発を続け、東京に戻り開業し28年。美容の道に入ったのは当時、重盛さんの家に下宿をしていた職人の影響だったと語る。
「たまたまかつらの職人さんたちが下宿をしていて。これなら食いっぱぐれないかなとこの道に入りました(笑)。修行を積み、時代の変化を目の当たりにする中で、『臭い、重い、きつい』かつらじゃいけないと。このままではどんどん和装が廃れていってしまうと危機感を感じたんです。着物を着たら苦しいって、その原因がかつらだって言われたら悔しい」
花嫁のニーズに応え続ける“かつらの伝道師”
和装という伝統的な世界の中で様式を守りながら、少しでも花嫁が楽にかつらをつけられるように、美しく輝くように、と日々新しいかつらの開発に取り組む。
「大御所の方々のやり方に口を挟むようなことはしません。だけど自分がやりたいことっていうのがある。ショートカットの花嫁さんが綺麗に日本髪を結えているように見せてあげたい。妊婦の花嫁さんなら余計に楽に着物を着せてあげたい。時代は変わっていくんだし、その時代の花嫁さんに支持されなければ駄目だって思っています」
最後に「自信がなくってがむしゃらにやってきたけど、今は『少しでも花嫁さんに喜んでもらえたかなあ』って楽しめるようになってきましたよ」と嬉しそうに笑った。
初出:「日本の結婚式」No.10