【和婚をつくる人々】
着付け師 杉山幸恵さん
「美しい花嫁」にこだわり続けて
フリーの着付け師からスタート、雑誌や広告等の撮影で活躍する一方でウエディングプランナーとしても知られる杉山幸恵さん。着付け師という、いわば花嫁に一番近いところで仕事を続けている杉山さんだからこそ見えるものがたくさんある。常に花嫁の気持ちに応えたいとの思いが仕事に変化をもたらし、杉山さんにしかできないスタイルを創り上げてきた。
「婚礼衣裳の着付けを始めたのは今から20年くらい前。ちょうどその頃から結婚式は和装から洋装へと変化し、花嫁さんはドレスをメインに考えるようになってきて、着物だけではなくドレスの知識が必要だと感じて勉強しました。和装を決める時だけお客様の前に出て行くのでは、トータル的な美しさなんて提案できませんから」
そこで3年間どっぷりとウエディングドレスの世界へ。日本人に似合うドレスとは何かを徹底的に研究、最終的にはオリジナルドレスをつくるまでに。
「凝り性なんです(笑)。この時の経験は、その後の仕事に大きく影響しました。和装を考えるうえでもプラスに働いていると思います」
花嫁さんの声を一つずつかたちに。杉山さんは会場プロデュースも手がけ90年以上の歴史ある邸宅を美しく甦らせた「ラッセンブリ広尾」をオープン。和婚にとどまらない活動の幅をさらに広げている。
「着付け師」という幸せな仕事
和と洋の世界を行き来しながら、現代の花嫁たちのリアルな美しさや憧れを表現していく杉山さん。仕事の根本には「着付け師」としての誇りがある。
「着付けというのは本当に奥が深いもの。同じ着物でも着付けの仕方で全く違ったものになります。花嫁さんの雰囲気や体型に合った着付けを施すことで最良の日の晴れ着が特別なものになっていく。それには技術はもちろん“心”があるかどうかが大切。一枚の布に命を吹き込むことが着付け師の仕事だと思っています」
初出:「日本の結婚式」No.17
取材・文/赤塚里恵