【和装レクチャ―】
伝統の日本髪
「文金高島田」とかつら
和の挙式の際に花嫁の髪形の代表的なものとして挙げられるのが、「文金高島田」という日本髪で、多くはかつらを使用する。ここでは、花嫁の髪形である文金高島田とそれに合わせる「綿帽子」「角隠し」についてみていこう。
和装の美しさを最大限に引き出す髪型「文金高島田」
江戸時代に登場した文金高島田は、島田髷(しまだまげ)の一種。島田髷の種類は非常に多く、髷を高く結ったものを高島田、もしくは文金高島田と呼ぶ。未婚女性の髪形の代表的なもので明治以降、花嫁の正装として定着した。
文金とは、江戸時代の男性の結髪様式「文金風」からきており、次第に女性の髷にも取り入れられ、文金高島田に発展したといわれる。その他、嫁ぐ娘のために母親が髷の中に小判(文金)を1枚忍ばせるために高く結い上げたことから文金高島田と呼ばれるようになった、という説もある。
現在では、ほとんどの場合、文金高島田の「かつら」を使う。かつらにも日本髪にもなじみがないため、「重くて苦しいのでは?」「似合わないかも…」といった不安や疑問を持つ花嫁もいるかもしれない。でも、安心して。今のかつらはさまざまな改良が施され、軽くて圧迫感のないものも用意されている。日本女性のきもの姿を美しく見せるために作られた髪形で、本来誰でも似合うはず。髪の色、額の形、びんの張り具合や髷の高さなどにさまざまな工夫があり、顔立ちや雰囲気、好みの合わせて調整したり自由に選ぶことができる。
前櫛(まえぐし)
前髪の後ろ、髷の前面に挿すヘアアクセサリー。文金高島田で使う装飾品は前挿し、中挿し、後ろ挿しの左右のかんざしと前櫛を含めて7点がセットになっている。
中挿し(なかざし)
髷の中に棒を渡し、左右に飾りをつける。かんざしや櫛の素材はさまざまだが、挙式の際には貴重な「べっ甲」のものを使うのが格調高いとされる。
前挿し(まえざし)
左右のびんの上部に飾る。かんざしや櫛は、白無垢にべっ甲や真珠、白珊瑚、シルバーなどを合わせる。色打掛、引き振袖には花や色が入った華やかなかんざしをが似合う。
びん
左右側面の髪。膨らませながら、丸く整える。乱れのない美しい毛流れが日本髪の魅力。
はね元結(もとゆい)
髷の上部を元結(もとゆい、もっとい)で結んだものが形式化して、装飾的になったもの。元結とは、髪を束ねるひものこと。
根、根飾り(ねかざり)
髪を一つにまとめた部分で、根飾りの下に隠れる。根を飾るものが根飾り。
髷(まげ)
髪を頭頂部で束ね、折り返したり曲げたりした部分。
後挿し(あとざし)
髷の根元辺り、下部の後ろ側に飾る。前挿し、中挿し、後挿しは左右対称につけるのが基本。
たぼ
日本髪で、後ろに張り出た部分。首筋を美しく見せてくれる。
文金高島田には「綿帽子」または「角隠し」を
綿帽子(わたぼうし)
文金高島田に結った髪の上にかぶる、白い袋状の布。挙式時には綿帽子か角隠しをつけるが、綿帽子を合わせることができるのは白無垢のみ。
角隠し(つのかくし)
文金高島田の上につける、帯状の布。江戸時代の女性が外出の際の魔よけやほこりよけとしてかぶっていた揚帽子(あげぼうし)が原型といわれる。「角を隠して夫に従順に従う」との俗説も。白無垢、色打掛、引き振袖すべてに合わせることができる。
初出:『日本の結婚式』No.28
イラスト/辻ヒロミ