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家族で泊まって結婚式【旅婚】が人気!今注目の結婚式スタイル

家族と滞在する結婚式
両家が心を通わすひととき

結婚式を「する」のではなく、「過ごす」場所として、ゆったりとした時間の流れを楽しむ事が出来る「旅婚」。
旅から始まる素敵な物語の主人公はあなた。

家族で泊まって結婚式【旅婚】が人気!今注目の結婚式スタイル

国定公園である明治の森 箕面の景観に溶け込む、大正15年築の料理旅館、音羽山荘。家族旅行をプレゼントするように、一棟貸し切りで過ごす、家族のかけがえのない時間。

大切にしたい「心を整える時間」

豊かな自然に身を任せ 何もしない贅沢なひととき

何もせずに本を読む。何もせずに湯に浸かる。読書をし、入浴をしているのだから、何もしないというのは正しくはないのかもしれないけれど。つい、何もせずに、と付け加えてしまうのは、そうして過ごす時間の豊かさへの満足感ゆえ。自然とみんなが集まるラウンジの大きなテーブルは実家のリビングみたいな居心地の良さ。ここでも何をするでもなく他愛もない話で盛り上がってしまって、伝えたい肝心な言葉か言い出せない。でも、まだ今は娘として過ごす時が残りわずかなことに甘えながら、花嫁へと変わりゆく時間を大切にしたい。月の光と共に夜を越えたら、薄暗い夜明けの静けさにも似た、凛とした美しさを身にまとってみせるから。

食のこと、旅のこと、アートのこと。人生についてのヒントがあれこれ詰まっていそうな本棚を前に、気分に任せて一冊選び取る。偶然開いたページに運命的な一節があるかも


名瀑へと続く渓流沿いの滝道を散策した後は、紅葉色の湯船に滔々とお湯の流れる家族風呂へ。目の前に絶景が広がる足湯や、岩盤浴ルームも旅の贅沢感を感じさせてくれる。

娘としての時間を過ごし、花嫁になる

四季折々に豊かな美しさを湛える森林を縫うように続く箕面の渓谷。澄んだ空気が心を整えてくれる。いつもの朝なら1秒でも長くベッドにいたいのに、早くに目が覚めたのは旅先だからか、まだ緊張が残っているからなのか。都会での暮らしは気に入っているけれど、一生に一度の挙式を行うのは、どこか懐かしい、家族を感じられる場所の方が自分らしくいられる気がした。結婚を決めてから、蓋をしてあまり見ないようにしてきた、寂しいとか切ないという感情がふとこぼれ落ちたのは、この場所で過ごした時間が素直になっていいんだよ、と教えてくれたからかもしれない。それはきっと送り出す側も同じ。この胸の痛みも幸せの一部。

新郎新婦の宿泊部屋兼、お支度部屋となる「森の詩」。箕面の森に抱かれているような、ゆったりと寛げる雰囲気が魅力。障子を開けると朝夕に趣を変える美しい景観が見晴らせる。

父や母も、そんな風におもってくれてたのかな


森の詩、鳥の詩、風の詩、水の詩、と名付けられた大小の部屋。木々を抜ける風の囁き、軒先の雨の雫、身近な人の手の温もり。旅先だからこそ気づく「当たり前」が、頑張りすぎそうになる心を解きほぐしていく。ゆらゆらと景色が滲む、大正時代のガラス戸を開けて深呼吸をひとつ。真鍮のドアノブや板張りの階段。ここには、真新しいピカピカとは違う、手沢のやさしい輝きがひっそりと息づいている。きっとあの場所にも似合うね、と選んだのは同じように大切に時を重ねたアンティークの振袖。3階の回廊から、箕面の大滝へと続く滝道を眺めていたら、ハイキングに向かう家族連れの小さな男の子が足を止めて「おかあさん、あそこにお姫さまがいるよ」だって。ねえ、ふたりにとってもそうだった?

娘の最後の身支度を整え、母の想いを娘に受け継ぐ「筥迫の儀」。花嫁の肩をトントンと優しく叩いて送り出す小さな儀式は母からの「あなたなら大丈夫よ」というエールのよう。

両家心ひとつに晴れの日を迎える

心と技を尽くした美食と、飾らない和やかな祝宴

ゲストとの一体感を大切にしたいから、高砂は同じ目線で。ありのままのふたりのことをこんなにも愛し、祝ってくれる友がいる。シンプルに幸せだと思う。親からしたら、まだまだ未熟なふたりだけれど、少しは安心してもらえたかな。大切なゲストに誓いの証人になってもらう人前式にして本当によかった。人前式といえば、中庭に面した寿司バーのガラス越しには、祝宴のための料理を見事な手さばきで仕込む職人の様子が見て取れたはず。さりげないプレゼンテーションにゲストの期待値も高まっているみたい。次の料理が運ばれてくるのをみんなが楽しみにしているのが伝わってくる。介添えの若女将に目配せをしたら、会心の笑みがかえってきた。


コの字型の建物に囲まれた中庭での心温まる人前式も。滝道を行き交う人からも祝福が送られる。お礼に金平糖で、幸せのおすそ分け。和やかな日本の結婚式風景。


熟練の寿司職人と料理長のいる料理旅館ならではの婚礼料理を。伝統と新しさを融合した四季折々の料理が祝宴に花を添える

こころがひとつになるひととき~式前夜~

両家の心を通わせる カウンターの魔法

昨夜、両家で囲んだ寿司カウンター。白木のカウンターに座り、まだ少しぎこちなさの残る私たちに「主(あるじ)」こと佐々木さんが握る寿司は、ここでしか味わうことのできない魔法。滋味深いおいしさで満たされ、緊張もほどけていく。我が子を送り出す親の気持ちに寄り添ってくれる主と女将さんの存在の心強さに、自分たちでも驚くほど自然にお互いの親への感謝を伝えることができた。すっかりご機嫌の父たちは、この後ラウンジでウイスキーを飲むらしい。まだ式の前夜だというのに、「いい旅になったわね」と母たちも満足げ。少し気が早いのは、「来年もまた、みんなで主に会いにきたいなぁ」と囁く彼も似たようなものかもしれない。

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ある夜、別棟から寿司バーで食事を楽しむ家族を目にしたスタッフの「結婚前日にこんな時間を両親と過ごせたらいいな・・・」との個人的な想いから始まったという音羽山荘の滞在型挙式。宵闇に浮かぶあたたかな光景は、いつまでも続いて欲しい時間そのもの。

文/加賀谷範子

日本の結婚式31号より

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