【伝統文化】
ニッポンのおめでとう
〜年中行事編
結婚式を含めた人生儀礼と、1年間の暮らしに巡る年中行事。今回は1年の折々のお祝いである年中行事をご紹介。
12月13日 事始め
さっぱりきれいにして年神様を待つ
この年も残すところあと半月。こんな時期になんの「事始め」かというと、お正月を迎える準備の始まり。お正月はその年を司る年神様を迎える月。日本人は古くから、時は連続するのではなく、1日は日の出とともに、1年は元旦ととも「新しく始まる」と考えてきた。その大事な節目を迎えるために、半月を費やしてきたのだ。まず12月13日は煤払い。さっぱりした場所に年神様を迎えるために大掃除を行う。そして大晦日までの間に、正月飾りを取り付け、年神様へのごちそうとして鏡餅やおせちを準備する。
1月 お正月
年神様をお迎えして年の初めを祝う
元日に始まり、門松を取り去る1月中旬あたりまでを松の内といい、これが実質的なお正月。この時期の最重要事は、各家庭に年神様がやって来るということ。かつては誕生日ではなく元日にみんなそろって1歳、年を重ねたが、それは年神様がいらっしゃった証拠でもあるのだ。年の初めにやってくるこの神様は活力をもたらしてくださる。日本人は古くから物事が一新する「はじめ」には大きな力があると考えてきた。だから、年末年始、節目を感じず漫然と年を越してしまうのは、活力をいただき損ねて、もったいない。
3月3日 ひなまつり
ケガレを祓って健やかな成長を願う
「桃の節句」とも呼ばれる女の子のお祝い。「節」は季節の変わり目を意味し、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕など、1年にいくつもの節句がある。今では「楽しい行事」だが、どれもその背景にはつつがなく健やかに過ごせますようにと祈る気持ちがある。人は日々暮らしてくなかで罪やケガレを身にまとう。それを放置しておくと病になると考えられてきた。その罪ケガレを紙などで作った人形(ひとがた)に付着させ、川や海に流したのがひな祭りの始まり。甘酒を飲むのは体内から邪を祓う意味もある。
5月5日 端午の節句
流行病の季節の邪気を祓う行事
今は「子どもの日」と呼ばれる端午の節句。鯉のぼりや武者人形を飾ったりするが、これは武士の世になってからのこと。もっと古くからの風習で今に姿を残すのは、菖蒲湯とちまきだろう。旧暦の5月5日は梅雨の季節。昔は流行病が恐れられる季節だった。菖蒲は解毒作用があるとされる民間薬として用いられた。一方のちまきは「茅巻き」とも書く。6月に神社の境内で、茅(ちがや)で作った大きな輪をくぐる姿を見たことがないだろうか。茅は古くから災厄などの悪しきものを避ける力があると信じられてきたのだ。
旧暦8月15日 十五夜
不思議な力を持つ秋の月を愛でる
年中行事のなかでも数少ない古い暦─太陰暦で行われるのが十五夜。太陰暦は月の満ち欠けを基準とした暦で、ちょうど月の真ん中の15日あたりが満月となる。なかでも空が澄みはじめる旧暦8月、現在の9月中旬から10月上旬の満月を愛でる行事は、平安時代から行われてきた。実はこの時期、一年でもっとも長く夜空に月が見え、さらに月は夏より天高く上る。『竹取物語』でもわかるように、人々はこの月の十五夜になにか特別に不思議な力を感じてきたのだ。この日はお団子やお神酒などのお供え物をする。
12月22日頃 冬至
12月22日頃 冬至
12月22日頃にあたる冬至は、1年でもっとも昼の時間が短い。それは太陽の神様の霊力が最大限に弱まる日、つまりその霊力を受けているあらゆる生命の力が弱まる日と考えられてきた。古代には、1年というサイクルのなかで冬至は大きな節目と考えられてきた。この日には柚子湯に入り、小豆粥を食べるなどの風習が伝わっている。生命力が弱まると怖いのは、邪気が入ってくること。邪気祓いの力を発揮すると伝わる柚子や小豆を用いたのだろう。冬至を無事過ぎれば、あとはまた太陽の力も生命力も復活だ。