今さら聞けない神社のはなし
日本には約8万の神社がある。多くの人が、初詣やお祭り、七五三などで神社にお参りした経験はあるはず。身近にあるけど、神社とはどういうところなのか、案外知らないことがたくさんある。
この記事では、埼玉県での結婚式を数多くプロデュースされ、神社との関わりも多いフリーランスウェディングプランナーの松本智保子さんが主催した「神主さんと神社について気軽にお話しする会」にて、埼玉県神社庁事務局長の武田淳さんに聞いた、神社についての話の一部を紹介する。
神社庁は、各都道府県にあり、神社に関する事務のほか、地域の振興をはかる仕事をする窓口である。神職の資格を持った職員が務めている。
神社で毎朝行われる、日供祭(にっくさい)という儀式がある。日供祭とは、神様に米・酒・野菜・果物などのお供えをして、祝詞を奏上し、国の繁栄を祈ること。埼玉県神社庁でも、毎朝職員が庁内の神殿にて、日供祭を行っているそうだ。今回お邪魔した埼玉県神社庁に、神社のような清々しい空気が流れていたのは、毎朝の祈りがあり、神様がいらっしゃったからなのだ。
参拝に際して
神社でのお参りの作法は、神社や地域によって異なる場合があるが、今回は神職の祭式作法にならった一般的な例を教えてくれた。
服装
神様に対するとき、目上の方に接するように正装をする。特に社殿の中などで参拝する際、男性はスーツにネクタイ、女性も同様の服装を準備するのがよい。素足でなく、靴下を履くのも忘れずに。
神様は寛大なので、絶対こうでないとならない、というわけではないが、自身が目上の人に大切なお願いに行くときの姿勢と重ねてみよう。
鳥居のくぐり方
鳥居には、一般社会と神域を区切る結界のような意味がある。「お邪魔します」の気持ちで、一礼してからくぐるのが丁寧なくぐり方とされている。境内を出る際も、社殿の方に向き直って一礼するとよい。
参道の歩き方
神社では参道の中央を神様が通る道(正中(せいちゅう))と捉え、そこを避けて進むのが敬意の表れと言える。参道の中央を横切るときは、軽く頭を下げながら通ったり、中央で神前に向き直って一礼してから横切るという敬意の表し方もある。
手水(てみず)
神様の前に立つ前に、罪や汚れを水で清めるために行う。右手で柄杓を持ち、左手にかけ、柄杓を左手に持ち直し、右手にかける。右手に持ち直し、左手に水をため、その水で口をすすぐ。水をはくときは手で口元を隠すとよい。最後に左手にかけて清め、柄杓を元の位置に戻して終わる。
柄杓1杯の水で行う=水を大切にする気持ちがあるとよい。
お賽銭と鈴
鈴がある神社の場合、お賽銭が先?鈴を鳴らすのが先?という質問もよくあるが、きまりはない。どちらが先でもよい。お賽銭の額も定めがあるわけでなく「気持ち」なのである。
拝礼の作法(二拝二拍手一拝)
①背筋を正して立ち、腰を約90度曲げて深いお辞儀をする。90度のお辞儀は神様の前でのみする最敬礼。
②両手を胸の高さで合わせ、右手を少し引いてから二度手を叩き、その後指先を揃える。
③もう一度背筋を伸ばした姿勢に戻り、最後に腰を約90度曲げて深いお辞儀をする。
教えてQ&A
今回のセミナーで参加者から出た質問や、神社庁に問合せがくるという質問について、武田さんからの回答を紹介しよう。
神社の人を何と呼んだらいいの?
たまに「宮司(ぐうじ)さん!」と呼ぶ人がいるが、神社の中での宮司は、会社でいう社長のこと。オフィスに入って一般社員に「社長さん!」と言っていることになる。神職さん、神主さんと声をかけるのがよい。
お守りやお札は1年で返すもの?
「常若(とこわか)」という思想でいうと、神様に常にみずみずしい状態でいて欲しい、それが1年という考え方に繋がっている。
神棚は、年末にお札を変えて、新年を新しい札で迎える。お守りは、初詣の際に返す。というのがよいとされるが、そうでなくてはならない、というルールがあるわけではない。
ご神木は触るとご利益がある?
神社によって違うが、木は触ると痛む。触ってください、という木はいいかもしれないが、人がたくさん触ってツルツルになっているのは木が壊死している状態。触らないで気を感じることがよい。縄などが張られ、入ってはいけないところには、もちろん入らない、触らないでいただきたい。
今回、この他にもたくさんの話を伺った。武田さんが一貫してお話しされていたのは、神様に対しての「気持ち」について。しきたりは、神様に対しての敬意から生まれたもので、そのやり方ばかりを気にするではなく、自分自身が、お願い事をし、感謝をする「気持ち」を一番に、行動するべきということ。
「気持ち」を込めて、神様に敬意を持ってお参りすれば、自然と体がうごいているのかもしれない。
神前式についても、ひとつひとつの儀式に深い意味がある。そういった意味をきちんと理解し、心を込めて結婚式(挙式)に向き合うと、とても有意義な式になるだろう。