仏前式の特徴と
神前式との違いについて
古き良き日本の伝統を感じられる和婚。神様の前で夫婦の契りを交わし、両家の結びつきを深める神前式が代表的な挙式スタイルにはなりますが、一方で御仏に結婚を報告する仏前式というスタイルもあるのをご存知でしょうか。
今回は仏前式の流れや注意点、また神前式との違いについて解説していきたいと思います。
神前式と仏前式の違い
まずは神前式についてですが、式の意味合いとしては、二人の結婚を神様に報告し、両家の結びつきを強め、神のご加護を願う儀式とされています。挙式会場は、神社もしくは神殿のある施設会場となり、神職が儀式を進行していき、身を清めてから三献の儀、誓詞奏上、玉串奉奠などの儀式を行います。
一方で仏前式は、仏様と先祖に結婚を報告する儀式となり、寺院(菩提寺や所縁のあるお寺)、自宅、仏前挙式に対応しているホテルや結婚式場で執り行います。僧侶が式を進行していき、新郎新婦への念珠の授与や焼香などのスタイルが特徴的です。
では次に、仏前式の流れについて見ていきましょう。
仏前式の流れ
宗派や寺院によって式次第の内容や順番が異なる場合もあるため、あくまで一例となりますが以下ご紹介いたします。
入堂
両親、親族、新郎新婦、媒酌人夫婦の順で本堂に入場し、仏壇に向かって右に新郎、左に新婦が着席。
司婚者入堂
式を執り行う僧侶が入場し、一同起立して合掌。
敬白文(けいびゃくもん)朗読
僧侶が焼香し、仏前に向かって結婚式を執り行う旨の敬白文を読み上げます。参列者一同は起立して合掌。
念珠授与
仏前に供えられた念珠を、僧侶が新郎新婦に授与。新郎には白い房、新婦には赤い房の念珠が授けられます。新郎新婦は両手で受け取って、左手の親指を除く四指にかけます。
念珠は人間の煩悩の数と同じ108つの玉が連なっており、念珠が新郎新婦に授与されるのは、「お互いの煩悩を認め許し合いながら生きていきなさい」という思いが込められていると言われています。
司婚の辞
僧侶が新郎新婦に、人生の苦楽を共にし円満な家庭を築いていく意思を問いかけます。新郎新婦が誓うと、僧侶は二人の結婚が成立したことを宣言します。
誓詞朗読
新郎新婦が仏前で結婚を誓う言葉を読み上げます。
新郎新婦の焼香
左手に念珠を持ち、新郎、新婦の順に焼香し合掌礼拝(らいはい)。
誓杯
僧侶が注いだお酒を、新婦、新郎、最後にまた新婦の順に3口で飲み干します。神前式での三三九度に当たる儀式で、神前式では新郎から先にお酒を飲むのに対し、仏前式では新婦が先にお酒に口を付けます。
親族固めの杯
参列者一同起立し、祝いのお酒を飲み干します。飲み干したら盃を置いて、合掌。
法話
仏の教えに基づき、僧侶が結婚を祝福する説話を行います。新郎新婦・参列者全員で合掌礼拝。
退堂
僧侶、新郎新婦、媒酌人、両親、親族の順に退場。
仏前式の注意点
仏前式の流れを把握したところで、次は仏前式の注意点についてチェックしていきましょう。
両家の宗派が違う場合
新郎新婦の宗派が異なる場合は、どちらかの宗派に合わせて挙式を行います。一般的には新郎の宗派の形式で挙式するケースが多いですが、納得のいくよう事前にきちんと話し合うようにしましょう。話し合いの際は本人同士だけでなく、両親や親族の意見も取り入れることが重要です。
仏教徒ではない場合
仏前式を行うには基本的に新郎新婦のどちらかが、挙式する宗派の信徒であることが条件となります。ただし、そうではない場合でも挙式ができる寺院もあるので、気になる会場がある場合は問い合わせてみましょう。
親族以外は参列できるか
仏前式への参列は、基本的には親族のみとされています。どうしても親族以外のゲストにも参列してほしい場合は、挙式する会場に確認するようにしましょう。
挙式後に披露宴はできるか
寺院では通常挙式のみを執り行うため、挙式後に披露宴や食事会を行う場合は別途会場を探す必要があります。仏前式に対応しているホテルや結婚式場であれば、続けて披露宴を行うことは可能です。
新郎新婦の衣裳について
寺院で結婚式を行う場合、一般的に衣裳は自分で準備します。衣裳・小物・着付けと事前に手配しておきましょう。基本的には和装が一般的ですが、寺院や会場によっては洋装もOKな場合もあるので、希望であれば事前に確認をとるようにしましょう。
参列者への事前連絡
キリスト教式や神前式とは異なり、ゲストのほとんどが仏前式の参列経験がないといった場合もあるかもしれません。参列には数珠が必要であること、服装は通常の結婚式と同じドレスコードで問題ないことをお知らせして、仏前式に初めて参列するゲストの不安を和らげるようにしましょう。
また挙式中は正座が一般的なので、それも知らせておくほうがよいでしょう。挙式の所要時間は30分程度ですが、正座しての参加が難しいゲストには椅子を準備しておくか、持参してもらうなど配慮を忘れずに。
指輪の交換の可否
式で指輪の交換を行いたい希望があれば、会場によっては可能な場合もあります。ただし、順序は念珠授与の後となります。
和婚の挙式スタイルとして仏前式も検討を
神前式と仏前式は、それぞれ意味合いや儀式の違いはあっても、日本の伝統や身近な人とのつながりを感じられる共通の魅力があります。さらに参列するゲストにも配慮して執り行えば、二人の門出にふさわしい素敵な結婚式になるはずです。
家系が仏教徒の宗派に属している場合や、神前式よりも仏前式のほうが自分たちの価値観に合っていると感じるようであれば、ぜひ選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。