【連載企画 第4回】
アートディレクター・ワキリエによる「日本のデザイン」嫁ぎ袖
アートディレクターワキリエ
株式会社スマイルD.C.代表。100年後みても美しいデザインをモットーにウエディング、カルチャー、ライフスタイルを中心に様々なクリエイティブを手掛ける。著書に「ボタニカルウエディング&デザイン」「スマイルウエディング」など多数。社団法人国際婚礼文化協会(IBCA)代表理事も務め、日本の文化伝統継承活動も行う。
かたちを変えて、世代を超えて、受け継がれる花嫁衣裳
誰もが新しい情報を素早くキャッチできて、目まぐるしく流行も変わる時代。そんな中でもふと身のまわりの生活道具など衣食住に関するものに目を向けてみると、伝統を感じさせるものも多く残っていることに気づきます。古いかたちが生かされているものもありますが、より使いやすく、現代の人々の好みを取り入れて変化したものも多く、だからこそ今の生活でも重宝されているのでしょう。伝統とは、よりよく進化することで受け継がれ、守られるものなのです。
結婚式もまた、時代に応じて変化してきましたが、神前式など和のスタイルの結婚式は、日本の伝統や心の豊かさを伝える場でもあり、文化の集積でもあります。現代の価値観の中で生きる人たちも、儀式の意味、衣裳や道具、おもてなしなどを通して、伝統の真価や美意識、そこに宿る精神性を感じることでしょう。
結婚式で日本らしさや伝統を表現できる花嫁衣裳。たった一日のために衣裳を購入するのはもったいないと思うかもしれませんが、かたちを変えて、世代を超えて受け継がれるものであれば購入する意義はあると思います。結婚式だけでなく、女性のその後の人生にいつまでも彩りを添えるものであってほしいとの想いを込めて、手描京友禅「富宏染工」とのコラボレーションにより、花嫁衣裳「嫁ぎ袖」をプロデュースしました。
レンタルではなく結婚を機に花嫁に贈られる衣裳であり、吉祥文様のひとつ「瑞雲」をモチーフに、白の振袖「白雲」と色鮮やかな「紅雲」をデザインし、モダンな印象に仕上げました。結婚式が終わったら袖を詰めて訪問着に仕立て直せる仕様になっているので、お正月や子どもの七五三、入学式など年齢を重ねてもさまざまな祝いのシーンで身に着けられます。詰めた袖の生地を使って赤ちゃんの祝着や七五三の衣裳を作るのもいいし、振袖のまま残して成人式を迎える娘に受け継ぐのも素敵。花嫁衣裳としての役割を果たした後も、さらなる成長とともに人生に寄り添ってくれるでしょう。