【和婚をつくる人々】
神職・宮司 森田義巳さん
【和婚をつくる人々】
神職・宮司 森田義巳さん
街の小さな神社で結婚式が年間100組
JR大崎駅近く、住宅地にある居木神社。大崎鎮守という由緒と長い歴史をもつが、けっして大きくはないこの神社で今、近隣だけでなく遠方のカップルまで、結婚式が年間100組も挙げられている。「私が生まれ育った居木神社に神職として戻ってきたのが14年前。8年前頃まで神前結婚式はほとんど行われていなかったんです。一生の中でも大きなお祭りである結婚式をきっかけに、多くの方に神社とご縁を持っていただければと、当社で結婚式を挙げられる体制づくりを始めました」 神社の日常の神事はことのほか多い。それ以外にも、地鎮祭や厄年の厄祓いなど個人の祈願の依頼もある。さらに神前結婚式を行うとなると、人手の少ない小さい神社ではかなり大変なこと。森田さんは挙式の体制づくりだけでなく、新郎新婦の希望にそって、挙式後の披露宴先として紹介できるレストランやホテル探しにも奔走した。一般的な「神社の神職さん像」からはみ出るほど活動的だが、森田さんは「ただ待っていてもだめなんですよね」と笑う。自ら「繋がりに行く人」なのだ。
神前結婚式を機に神社が心のよりどころに
森田さんはフェイスブックで結婚式やお宮参りといった個人の祈願、神社の催しの様子などを日々、更新している。画面からは出会った人たちへの森田さんの想いが伝わってくる。大安の週末など日に結婚式が何件か重なることもあるが、写真に映る森田さんの装束はどれも違う。森田さんはおしゃれな方だが、それだけではない。どの新郎新婦にとっても生涯忘れえぬ婚礼の儀を、神職の森田さんも同じく、それぞれを唯一の大事な儀として執り持つ気持ちがそこから伝わってくる。居木神社では結婚式の数が増えただけでなく、当初、森田さんが思い描いていたとおり、それを機に神社に足を運ぶ人たちも増えてきた。赤ちゃんが生まれてお宮参りに、年を重ねた親の健康祈願に、新郎新婦は神社が心のよりどころにもなり、その後もご縁が続いている。