【伝統文化】
知っておきたい神社と神さま
同じ名前の神社がなぜ、全国各地にあるのか? それは同じ神様を祀っているから。ここではよく名前を聞く神社と、そこに祀られている神様について紹介しよう。
皇祖・天照大御神をお祀りする 神明神社 皇大神社 天祖神社
全国的に有名な神社といえば、伊勢神宮があげられる。その内宮にお祀(まつ)りされているのは天照大御神(あまてらすおおみかみ)。皇室の皇祖神だ。日本神話には、最初に「夫婦の神様」となられた伊耶那岐命(いざなぎのみこと)が禊ぎをした時に誕生した、とても尊い神様として記されている。
天照大御神をお祀りする神社は、わかっているだけでも全国に1万8000社もあるという。神宮の神札を持って全国に伊勢信仰を広めた御師(おんし)と呼ばれる人たちが登場し、各地に天照大御神をお祀りする神社ができていった。社名に「神明」「皇大」「天祖」と付いていなくても、「◎◎大神宮」という名前の神社は、同じく天照大御神をお祀りしている。
自然を司る山の神様を祀る 日吉神社 日枝神社
全国にある日吉神社、日枝神社は「山王信仰」の神社。滋賀県と京都府にまたがる比叡山の山麓にある日吉大社が山王信仰の総本宮だ。ご祭神は多いが、なかでも大山咋神(おおやまくいのかみ)は比叡山の神として古くから信仰されている。この神様は山や水を司り、万物の生成発展を守護するとされる。比叡山といえば天台宗の仏教寺院・延暦寺が有名だが、山王信仰の神様は天台宗及び延暦寺の鎮守神として、広く信仰されるようになった。
ちなみに、各地の日吉神社・日枝神社でよく見かけるのがお猿さんの像。お守りや絵馬にも描かれていることが多い。山王信仰では猿が神様のお使いとされているのだ。
関東の人々が頼りにした 氷川神社
氷川神社はその多くが関東圏にある。総本社とされるのは埼玉県大宮の氷川神社。ご祭神はヤマタノオロチ伝説で有名な須佐之男命(すさのおのみこと)。ご夫婦である稲田姫命(くしなだひめのみこと)、子孫であり出雲大社のご祭神でもある大己貴命(おおなむちのみこと)とともに祭られている。
東京・埼玉一円はかつての武蔵国。この地域の開拓には出雲の人々が深く関わっていたらしい。出雲国が斐伊川の氾濫で悩まされたように、武蔵国にも利根川をはじめ甚大な被害をもたらした河川が多い。ヤマタノオロチに見立てられた川の氾濫を収めた神様として、武蔵国にも須佐之男命が祀られる氷川神社が増えていったのだろう。
秀でた才能の学問の神さまを祀る 天神社 天満宮 北野神社
平安時代の政治家・文人である菅原道真(すがわらみちざね)を祀る神社は「天神信仰」といわれる。道真は没後、京都の地に北野天満宮として祀られた。これが天神信仰の始まりだ。
現在は学問の神様として有名だが、もとは荒ぶる神だった。というのも、道真はその才能を妬まれて大宰府(現・福岡県)に左遷させられ、失脚したままその地で亡くなってしまう。その時、京に落雷などの怪異が起こり、道真は天神=雷雨神と結びつけられた。時を経るとともに雷雨神との関係から各地で農業神として祀られるようになる。そして、寺子屋が広まった江戸時代の頃から、学問の神様として崇敬されるようになった。
武家に長く愛され続けた 八幡宮 八幡神社
全国でその数が1位、2位を争うほど多いのが八幡宮・八幡神社。ご祭神は第15代天皇の応神天皇(誉田別尊)とその母神の神功(じんぐう)皇后、妃の比売神(ひめがみ)で、「八幡三神」と呼ばれる。八幡神の信仰の始まりは大分県の宇佐八幡宮。奈良時代、「東大寺の大仏造営に協力する」と託宣したことで知られるように、仏教と関わりの深い神様なのだ。
鎌倉時代になると、源氏が氏神様として鶴岡八幡宮を創祀。それ以降、武神として武士階級やさらには庶民にも信仰されるようになり、全国的に八幡神を祀る神社が増えていった。また母神の神功皇后は子を慈しむ聖母としても信仰されている。
日本の結婚式No23
文・平井かおる(日本の神道文化研究会)
イラスト・今井未知
2022年12月一部改訂