和装・ヘアメイク

「美しい花嫁」をテーマに。
世代を超えてつなぐ友禅の技と志

2018.01.31

花嫁衣裳ができるまでには、気の遠くなるような時間と手作業の積み重ねを必要とする。最高級の本手描友禅がたどる工程は18から25、花嫁のうちかけであれば、仕上がるまでに早いものでも半年、大作になると900日に及ぶものもあるという。その工程は、作家による意匠の発想から仕上げ仕事に至るまで、全工程それぞれ違った場所で、その道一筋を極めた職人たちによって支えられている。ここでは、時代を超えて愛される花嫁衣裳のつくり手たちに着目。彼らの技術と伝統が結集した花嫁衣裳も紹介しよう。

時代を超えて継承される花嫁衣裳のつくり手の技と志

時代を超えて継承される花嫁衣裳のつくり手の技と志

本物をつくり続ける職人の集まり、それが友禅丸章。友禅丸章の代表であり友禅の巨匠・秋山章氏のもとで、20歳の頃からものづくりの全てを学んできた一番弟子が、友禅作家の長沢正恵さんだ。秋山の厳しい指導から受け継いだのは、祈りの中で生まれる謙虚さと感性を磨くための日常からの心構え。若いころから五感を研ぎ澄まし、本物を見分ける目を養うことをたたき込まれた。

「先代のもとで修め、先代を離れ、先代の作風を破って、なお魅力がつくれたらこの上ない幸せ。自分の感性も大事にしながら、先代同様、美しい花嫁というテーマを追い求めたい。特に、いくつであっても花嫁さんだけがもつ初々しさを、私なりに表現したい」と、2014年に二代目・章を襲名した長沢さんは話す。

長い歳月をかけて育てた職人一人ひとりが財産

長い歳月をかけて育てた職人一人ひとりが財産

うちかけの格調と豪華さを担う金彩職人は「今日は調子が悪くてできない。そんなのは、職人じゃあり得ませんから」とつぶやく。寡黙ながらもポツリともらす言葉に、職人としての厳しさと自負がうかがえる。熟練の挿し友禅職人は、本手描友禅のうちかけの魅力と難しさについて「どんなに華やかな振袖の列席者がいても、花嫁が主役になれる衣裳でないといけないこと」と語る。そんな彼女のもとには今年、18歳の若い弟子が入った。螺鈿工芸を手掛ける別の職人は、まだ若い女性。信じられないほど細かい作業を黙々と繰り返す。

オーケストラにたとえるなら、作家が指揮者で職人たちが奏者。作家と各パートを担当する職人たちがイメージをどれだけ高度に共有できるかが、美しいうちかけをつくり上げるために大切。熟練した技術と、花嫁のために儀式の衣をつくる者としての心構えをもつ職人こそが財産。60年以上の歳月をかけ、職人を育てながら常に美しい花嫁とは何かを追求し続けてきた初代・章。その偉大な仕事は、次の世代へと確かに受け継がれている。

禅作家 長沢 正恵(ながさわ まさえ)
20歳で友禅丸章に入社し、秋山章のもとで商品の買い付けや発注を担当する中でものづくりの目を養った後、京都アトリエでの制作の道に入る。現在は、友禅丸章が手掛ける衣裳の多くの制作を統括する職人頭であり、友禅作家。初代・秋山章に50年近い師事を経て2014年より「二代目・章」の襲名を許され、「御祓乃衣」や最高級の本手描友禅のうちかけ作品を次々と発表している。

(写真右)秋山 章(あきやま あきら)
究極の白無垢「御祓乃無垢」と本手描友禅のうちかけ・振袖をつくる作者 秋山章は、婚礼衣裳の道に生きて60年以上。女優やスポーツ選手など有名人の豪華な結婚式や、数え切れない程の花嫁のためのうちかけをつくり続けてきた。2016年には、女優の藤原紀香さんが歌舞伎俳優の片岡愛之助さんとの挙式・披露宴で着用し大きな話題に。京都・洛北のアトリエでは朝の祈りから仕事を始め、夕の祈りで仕事を納める。花嫁を包む儀式の衣は、祈りの日々の中で生み出されている。

神聖な儀式のための白無垢
〜ふたりが結ばれる縁に感謝して〜

神聖な儀式のための白無垢
〜ふたりが結ばれる縁に感謝して〜

祝賀奉珀(しゅくがほうはく)
祝いの熨斗(のし)文様によろこびの花を配し、格式高い金箔パール箔でつくり上げた最高級の御祓乃無垢。気品と格式を大事にしたい花嫁におすすめの一着

(左)富貴奉珀(ふきほうはく)
祈りの日。うれしさのひ。よろこびの日。一襲の無垢に四季折々の花々を配し、パール箔の糸目を生かして全てを白一色で縫い上げた、祈りのうちかけ

(右)真圓寿珀(しんえんじゅはく)

真圓のおめでたい花を金彩工芸のパール箔で張り重ねた、格式高い御祓乃無垢。薄紅梅初々しさも、この作品のポイント

人生に一度の日のためのうちかけ
〜晴々しく豪華に宣言して〜

人生に一度の日のためのうちかけ
〜晴々しく豪華に宣言して〜

賀上の寿(がじょうのことぶき)

崇高で不思議な縁に結ばれるめでたさを象徴したうちかけは、寿ぎの熨斗目(のしめ)に、花の美しさを添えた祝いの衣。雅二重文地の白に金彩工芸が新しさを生む、作者・章の誇り高き逸品

(左)華祥御車(かしょうみぐるま)
祝いの花車をめでたさの鶴が舞う吉祥文様。雅二重文地の金彩、若草色の本手描友禅、金彩工芸の一襲は作者・章の代表作

(右)献上花車(けんじょうはなくるま)
茜の黄丹色(おうにいろ)にはんなりとした友禅の妙を生かし、一味の古代友禅でやさしさをつくった、作者・章のぬくもりの作品

(左)慶賀爛漫(けいがらんまん)
深紅の地の左袖から下前にかけて華やかな花車一台を大胆に描き、その上に、咲き誇る四季の花々を美しい友禅の技法で彩った優美な作品。花車のバックに施された金彩工芸の技法が、花々の美しさをより引き立たせている

(右)寿冠豊爛(じゅかんほうらん)
本手描古代友禅で染め上げた黒地の駒羽二重めでたさの花集め、さらに格式高い金彩工芸で松をあしらい、金の水玉文章地を表現した豪華な最高級の儀式のうちかけ

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