日本各地に今も残る懐かしい婚礼
祝いめでたと手一本(福岡・博多)
博多っ子の花嫁を送った、山笠の祝い唄と手拍子
博多の町が熱く盛り上がるお祭り、「博多祇園山笠」。最終日行われる追い山一番山笠が櫛田神社入りする時に決まって唄われる「博多祝い唄(祝いめでた)」と合意の手締めとして行われる「博多手一本」はかつて博多っ子の結婚式では定番演出として知られいまも、お祭り好きを中心に受け継がれている。
谷口亮さん・葵さんご夫妻もまさにそうだ。新婦の葵さんは市内の歴史ある呉服町に実家があり、父は山笠に毎年参加し、母は炊きだしの手伝い。「私自身も小学校6年生までは締込み姿で法被を着て、山笠に参加していたんですよ」。それでも「結婚式をするならオシャレなチャペルが夢だった」という葵さんだが、実際に行われた結婚式は、博多ならではの伝統的なものに。
というのも、転勤で福岡に来ていた新郎の亮さんが東京へ戻ることに決まり、亮さんとご両親は、葵さんが遠く離れた東京に嫁ぐ前に、生まれ故郷である福岡で結婚披露宴を行うことを勧めてくれた。ならば急いで、ということで運よく日程を押さえられたのが、歴史あるホテルオークラ福岡。
そこで提案されたプランが、櫛田神社に人力車で向かい、挙式をして、博多川から船でホテルに戻ってきて披露宴を行うというもの。そして「披露宴の締めは、博多祝い唄と手一本でした」と、葵さんは結婚式を振り返る。
櫛田神社は葵さん一家にとって氏神様。お宮参り、七五三、初詣、そして山笠と、行事のたびに通ってきた神社。
さらに披露宴では、実家のご近所さんが法被姿で祝い唄を歌ってくれたという。「櫛田神社での挙式は想像以上にすばらしく、町内のおじちゃんたちが『博多祝い唄』を歌ってくれたときは感動して、ずっと泣いていました」東京へお嫁に行く博多っ子の葵さんを送った、懐かしい祝い唄と、励ましの手拍子の響き。山笠のお祭りが世代を越えて受け継がれる限り、博多の結婚式から消えてなくなることはないだろう。